ブレイク・グリフィスは過去を見る(3)

ブレイク・グリフィスは過去を見る
勇者の息子

2.

「ニック!そろそろ起きないと遅刻するんじゃないか?」
下の階からヘンリーの叫ぶ声がする。
慌てて時計を確認すると時間はもう家を出る10分前。
「わ、うそ、そんな時間!?」
枕元に置いてあった荷物を掴み、階段を駆け下りる。
「おはよう、お寝坊さん」
「おはよう、ヘンリー」
ヘンリーは「もう朝メシは仕事しながら食え」と言って、僕のために作ってくれたお昼のお弁当と包んだ朝ごはんを渡してくれた。
「いつもありがとう」
大好き!と、僕はしゃがんでヘンリーを抱きしめた。
彼はホビット族の成人男性。父親と同い年で、36才だが、見かけだけじゃ人間族の子供にしか見えない。
シルバーブロンドの肩につく程の髪を一つに結って、丸くて大きい若葉色の瞳はいつも真っ直ぐに僕を見つめてくれる。
「ほれ、行ってこい!」
背中をぽん!と押すヘンリーは、その小さな身体より大きく、いつでも強く見えるのだ。

起こしてくれたヘンリーのおかげで、なんとか仕事には間に合った。
僕は安堵のため息を吐くと、一軒家のドアをコンコン、とノックした。
「おはようございます!本日ご依頼頂きました何でも屋のニコラスと申します。今日は庭を荒らす魔物の駆除とお聞きしております」
中から出て来たのは人の良さそうなおばさん。食事の準備をしていたのか、家の中からは暖かいトマトスープの香りが漂って来た。
「あらあら、可愛い男の子が来たこと!さあ、中に入って」
「失礼致します」

今日の依頼はこのベル・ジブソンというご婦人の庭にやって来る魔物の駆除。
詳しい話を伺うと、どうやら庭に生えているリンゴの木に実った果実を目当てに魔物がやって来るらしく、いくら追い払っても懲りずにやって来るそうだ。
「全然種類の違う子が代わる代わる来るのよ、何度か来てる子も居ると思うけど…」
「こういったことは初めてですか?」
「去年もあったんだけど、その時は北の森の入り口に住むエルフのお兄さんに頼んだのよ、近くの魔物達を駆除した後、なにか特別な薬を撒いているようだったわねぇ」
「なるほど…」
僕は頭を抱えた。
その「エルフのお兄さん」が撒いたのはおそらく魔物よけの薬だろう。
魔物よけの薬は市販では販売していない、なんせ強力な魔法がかかった薬だ。
欲しい場合は国に認可された店で申請して、一から調合してもらわないといけないのだ。
(どうしよう、駆除なら僕でもできるけど、薬の準備は何日か掛るなぁ)
僕が悩んでいると、おばさんは思い出したかのように声をあげた。
「そうだ、そのエルフのお兄さん、最近は魔物の駆除は辞めちゃったみたいだけど、薬の販売とかしてたはずよ」
「あ、そうなんですか?でも薬の請求してないし…」
「もし在庫があるなら少しお金余分に出してここまで出張してもらうこと出来ないかしらねえ…」
「そっか、ちょっとダメ元で声をかけてきますね」
北の森はここから徒歩10分程の近場だ。
僕は軽く走りながら「エルフのお兄さん」の薬屋に向かった。

 


 

 

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